LOTポーランド航空はストの回避ができるのか

「ゴールデンウィークにまさかのスト?」今月21日からストライキの実施について3月21日からLOT労組組合員による賛否投票が始まった。具体的な結果については4月21日に発表されるという。

経営陣の主張とLOT労組の要求

2016年にLOTポーランド航空の代表取締役に就任したラファウ・ミルチャルスキはこう語る。
「ストライキは実際にはあり得ないと私は強く確信している。理由は簡単だ。LOTは今成長しており、以前と比較して大多数の従業員には賃上げを行っているからだ。労組の要求する報酬体系は無理がある。会社の経営が成り立たなくなる可能性もあるため大幅な賃上げを短期間に実施するわけには行かない。経営に害をもたらさない賢明な給与体系を作り上げることが重要だろう。LOTの労組のいわんとすることは一生懸命働く者がより多く分配を受けるのではなく、全員が同じ給料であるべきだというものだが、それは私がLOTポーランド航空の社長である限り絶対に同意することはない。」
しかし、現実は2016年度に同社の4人の幹部に支払われた賞与は250万ズウォティ(約7500万円)。これを知って心穏やかでない社員は多い。ひとりのパイロットは現社長が就任した年で、まだ成果も出ていなかった時期の賞与にしては破格すぎだと語った。巨額の役員賞与は出せても、従業員の待遇は改善しないことを理解せよというのでは難しい。
労組が要求するのは2010年時点と同じレベルまで従業員の待遇を改善すること、そして会社の利益を社員にも還元することだ。パイロットと客室乗務員の労働組合は今月21日から1か月をかけて、5月の連休(日本のゴールデンウィークと同じ時期)のスト実施への賛同がどのぐらいになるかを測っている。組合員の無記名投票の結果で実施か回避かが決まる。

パイロット、フライトアテンダントの雇用条件は?

最近LOTのパイロット200名と客室乗務員220名が昇進・昇給の対象になったという。同社の給与規定では副操縦士が2万ズウォティ(約60万円)、機長は2万9000ズウォティ、現在、操縦士の最高額は約4万ズウォティとなっている。また、客室乗務員の場合は新規雇用の場合5500ズウォティ(約16万5千円)、キャリアの長さに応じて7500~8000ズウォティ程度の基本給に手当分として1500~2000ズウォテx(約4万5千円から6万円)が支給されている。
会社更生後のLOTはパイロットやキャビンアテンダントの雇用に際して正規雇用する代わりに、それぞれが個人事業主として税務署に登録し、乗務員の業務委託契約を結ぶ形態をとることでかなりの人件費の削減を行っている。労組側が問題視しているのはこの条件もある。固定給が支払い給与のわずか50%で毎月の収入が安定しないことから、固定給を増やすよう要求している。
業務委託契約で働く場合は、例えば出産:育児休暇など通常の雇用契約の従業員なら労働法で保障されている有給の長期休暇は取れない。また年に2週間ほど強制的に業務から離れなければならず、その間は収入がないといった問題もある。若い女性がフライトアテンダントの仕事を続けて行くには、家庭や子供を持つことはあきらめざるを得ないというのが現在の状況なのだと女性客室乗務員は嘆く。会社倒産で路頭に迷うか、皆で痛み分けをして再生するかを迫られた労組の同意で、経営状況が改善するまでの暫定処置として2016年までの条件付きで雇用契約を変更した従業員も多かった。しかし、期限が過ぎ、会社は黒字経営となっているのに何も対応しない雇用主に対して社員たちはいらだちを見せる。

なぜ今ストライキなのか?

LOTポーランド航空の昨年度までの経常収支が黒字で右肩上がりであるということ、政治面でも現政権(右派法と正義)が労働者側寄りの姿勢を示しているということからだという。経営側は労組側に魅力的な提示をしたのだというが、客室乗務員労働組合側のスタッフの話では、経営陣は柔軟に合意へ進める対応ができず、従業員が満足するような条件の提示はされていないという。
現在、固定給は給与の半分で、残りは就労時間ごとに変則的に変わるというのも乗務員の不満の理由となっている。給与体系の問題は氷山の一角にすぎない。客室乗務員にトイレ掃除を強制的な義務にすることも問題になっている。現在は客室乗務員がトイレ掃除を行ってはいるがそれは任意で行っており、職務として雇用主から強制されているわけではないそうだ。

専門家の声は

EUの経済社会評議会経営者グループ議長ヤツェク・クラフチク氏は次のように語る。
「ストライキは考え得る手段の中で最悪の選択だといえる。ポーランド航空は長い経営難を乗り越えてようやくプラスの成果が出るようになってきている。そんなときにその場限りの判断をして(会社の運命など)何も気にならない労働組合というお化けが出てきてしまった。従業員にだって会社の未来に対する責任はあります。近年ヨーロッパの航空業界ではストライキの騒ぎがあちらこちらで聞かれるようになりましたね。航空会社のみならず航空管制官までがストライキを行った結果、(PricewaterhouseCoopersの調査によれば)2010年からの5年間で95億ユーロの損失が出て、旅行会社の損害は航空機の運航中止や遅延によって50億ユーロにも上っている。ストライキが起きれば振替輸送をする同業他社には旨味があるはずだが、ストが起きた航空会社の評判は明らかに下がる。LOTポーランド航空はヨーロッパでは比較的小規模の航空会社、同業他社と競い合うためには高いクオリティと確実性で信頼を得ることが必要不可欠でしょう。」
LOTポーランド航空が再生を期して会社更生をスタートしたのは2013年。その時期を種まきに例えるなら、今ようやく大きくなってきた実を、熟す前に食い尽くしてしまうのは危険とも思える。会社更生を行う以前の給与体系や支払いシステムを今そのまま復活させるはかなり無理もある。適当なところで折り合いをつけることが肝心だと経済専門家は言う。もしもストライキが実施される場合は、ポーランドでも連休が続く5月第1週末といわれている。日本のゴールデンウィークとも重なるため、今後の動きには特に注目したい。